「海を見ながらのんびり猫と暮らせたらな」と考えたことがある人は多いのではないでしょうか。猫ライターで作家の逸見チエコさんによる、ねこらむ連載第二回。今回は、鹿児島県の離島、喜界島が舞台です。人口7000人弱の珊瑚礁に囲まれた島で、町田裕一さんが出会った猫さんは……。ゆるやかな空気が届きそうなリポートです。
こんにちは。猫ライターの逸見チエコです。今回は猫と離島に暮らす、羨ましい生活を送る友人の町田さんにインタビューをしてきました。明日も知れないコロナ禍になって思うことは、日々の暮らしにもっと贅沢になってもいいのではないかということです。物質的なことでなく、好きな景色のある場所で好きな人たちと好きな仕事をして暮らす。そんな日々を一歩先に手に入れた彼の、素敵な生活ぶりをご紹介します。
誰もが一度はあこがれる? 猫との島暮らしを実現
東京から喜界島に移住して4年目。以前は九段下のオフィス街に事務所を構え、あわただしい毎日を過ごしていた町田さん。喜界島でもあいかわらず忙しそうではありますが、仕事の合間に自宅前の海の写真をアップしたり、メスティンを使ったメニューを開発したり、海辺のゴミを拾いに出かけたりと、充実した生活が町田さんのsnsから伝わってきていました。
そうこうしているうちに猫と暮らし始めた町田さん。かわいらしいメスのサビ猫です。
真っ黒に日焼けして「喜界島に移住して猫と暮らす人」になった町田さんに、現在の様子を聞いてみました。
―――猫さんの名前と、一緒に住むことになった経緯を教えてください。
町田「ちひろちゃんといいます。普段はちーちゃんと呼んでます。出会いはですね、ある日自転車で買い物に行くときに、草の隙間に子猫が見えて。こっちを見て鳴いていたんです。そのときに何となくですが、帰り道、もしついてきたらこの猫を飼おうって思ったのがきっかけです」
―――っていうことはついてきたんですか。
町田「そうなんです。ついてきたので、そのまま家に入れて。このとき、ちーちゃんは生後一ヶ月くらい。頑張ってお世話しまして、今は2歳です」
さとうきび畑の番猫も? 東京では考えられない猫ぐらし
―――猫に選ばれた感がすごいですね。ちーちゃんとの生活はいかがですか。
町田「楽しいですよ。仕事部屋を覗きにきて、仕事してるのを確認したらまた出て行くんです。お互いの姿が見えなくても、近くにいるのを感じていたいんでしょうかね。夜はキチンと寝室にきて一緒に眠るんです。仕事で家を空けなければいけないときは、ちーちゃんに留守番をお願いするのですが、帰ってきたときがもうすごいです。ベタベタで離れないの(笑)」
―――かわいいなあ。
町田「でしょ。海に行くときについてきたりします。買い物に行くときも。これは東京ではできないと思います。こちらならではの猫との生活ですね。となりにさとうきび畑があるので、ねずみを捕まえてきたりしますけど」
―――何か印象的だったエピソードってあります?
町田「ああ。僕が出かけると家の前で待ってるんですよ。ずっとそこで座って待ってるんです。僕はそれを知らなくて、近所の人に教えてもらったのね。ちーちゃんずっと待ってるよって。どんだけ僕が好きなのかと思って、感動したんですが……。そこがちーちゃんの定位置だったっていうオチがありましたね」
―――笑。
町田「出かけてなくてもそこにいたので発覚しました」
―――では最後に、町田さんにとってちーちゃんの存在ってどんなものですか?
町田「猫自体はじめて飼っての感想なんですけど、魔女の宅急便のジジっぽいなって思いました。きっと、ちーちゃんも話せたら、ジジみたいなトーンで話しそうって。あと、転んだりした後、何事もなかったように次の動作に移るポジティブさは見習うべきだなって。猫って面白いですね。喜界島での暮らしにさらに彩を加えてくれたのがちーちゃんなんです」
―――なるほど。楽しそうでいいですね。ちーちゃんに会いにいくのを楽しみにしてます!今日はありがとうございました。
TEXT/逸見チエコ
ちひろちゃんプロフィール
名前:ちひろ(ちーちゃん)
種類:サビ猫
性別:女の子
出身:喜界島
町田裕一さんプロフィール
奈良県生まれ。父方の祖父母が喜界島出身。
20代から東京へ移りIT系の仕事に従事した後、Web制作Webアプリーケーション開発会社を設立。2014年に人生の転機が訪れ、祖父母やご先祖が育った地に移住したいと考えはじめ、2017年より二地域居住を開始し、その後、完全に移住。
現在は、SE、アドバイザー、コーチングなど、基本はITをベースに、フリーランスとして活動している。
逸見チエコさんプロフィール
マンガ家・イラストレーター・編集ライター。主な著書に『猫カフェめぐり』『猫カフェめぐり 旅情篇』(ともにエンターブレイン)、『猫まちさんぽ』(ILM)『看板にゃん猫 -猫たちがこっそり教えてくれた14の奇跡の出会い-』(マイクロマガジン社)などがある。
看板にゃん猫 -猫たちがこっそり教えてくれた14の奇跡の出会い-