インタビュー 猫場放浪記 看板猫

【猫場放浪記5】妖艶な黒猫に逢いにゆく。京都のアンティーク着物店「戻橋」

(C)宇津木健司

猫に惹かれ、猫を求めさまよう、猫場放浪記。

今回たどり着いたのはいにしえの都、京都。町屋の趣きを残しながらも、どこか異彩を放つこちらはアンティーク着物店「戻橋」。

黒と赤を基調とした、ただものならぬ雰囲気の建物 (C)宇津木健司

ここに黒猫がいると聞き、はるばるやってきたのは夏のこと。高なる鼓動を抑えながら店の2階へあがると……

いた~!

「いらっしゃい、よく来たわね」 (C)宇津木健司

こちらがこの店の看板猫、綱(つな)ちゃん(4才)。漆黒の毛並みにつぶらな瞳が麗しい。

綱と聞くと横綱を思い浮かべてしまう筆者がその由来を尋ねると、『平家物語』にも登場する渡辺綱(わたなべのつな)がら取ったのだという。

源頼光の四天王と言われた綱は、店名でもある「戻橋(一条戻橋)」で女に出会い送り届けようとするが、その女が実は鬼(!)で、戦いの末、綱は鬼の腕を切り落としたのだとか。

なんとも勇ましい人物から貰った名前であるが、こちらの綱は無邪気なレディ。お気に入りの場所はアンティークの椅子と、鏡貼りのフロアという美意識の高い猫である。

見惚れてしまう美しさ。 (C)店主提供

そんな綱ちゃんがこの店にやってきたのは4年前の夏。「保護猫活動をしているお客様に黒猫が好きと話したら、すぐに見つけてくれて」と店主。

猫を飼うのは初めてだったが、さっそく2階にキャットケージを設え、万全の体制で綱ちゃんを迎え入れた。

立派な綱ちゃんハウス。

「最初こそ、怯えていましたが、すぐに2階を探検し始めて…」。生後3ヶ月という好奇心まっさかりの時期に、猫にとっては遊園地のような場所を与えられたことにより、あっという間に店に馴染んだのだとか。

幸いなことに、壁をガリガリしたり着物にじゃれつくこともなく、遊ぶのは専ら鞠(…高貴!)。店主も仕入れの度につい鞠を増やしてしまい、今では遊びきれないほど多くの鞠に囲まれてご満悦のよう。

そんな綱ちゃんは、接客も大得意。

お客様が2階へ上がってくると大きな声でニャーとご挨拶。そして「写真撮っていいのよ」とポーズを決めまくってくれるので、たちまちファンが増えた。

アンティークのグラスが似合う。 (C)店主提供

「着物に全く興味のない方も綱ちゃん目当てで遠方から来てくれます」。

綱ちゃんに魅了されているのはお客様だけでなく店主もしかり。

「どんな姿も絵になるので、つい写真を撮ってしまいますね」。

プロ級の腕前を持つ店主が撮った綱ちゃんの写真が店1階のモニターに映し出され、その愛情が垣間見える。

「綱が来る前は1人でやっていたお店ですが、今は一緒に店を切り盛りしてくれる相方として、なくてはならない存在です」。

 着物雑誌「KIMONOanne.」にも登場しているそう。(C)店主提供

美しいアンティーク着物と、美しい黒猫。至福のときを過ごせる「戻橋」。またすぐに訪れたい場所だ。

戻橋Twitter :@modoribashi237

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