ねこらむ

猫ライター逸見チエコ:看板猫についての記憶①

お店にいたりいなかったりするのも魅力。看板猫に会えると、とってもうれしいですよね。『看板にゃん猫 -猫たちがこっそり教えてくれた14の奇跡の出会い-』(マイクロマガジン社)ほか、看板猫についての著作も多い猫ライターで作家の逸見チエコさんによる、ねこらむ連載第一回です。たくさんの看板猫に会うなかで、特に逸見さんが印象に残っている猫さんは、一体どんな子?

illustration by Chieko Henmi

「あまえんぼう」の看板猫さん。カメラを向けると?

こんにちは。猫ライターの逸見チエコと申します。 今までたくさんの猫を取材してきました。カフェの猫、バーの猫、旅館の猫など200匹以上だと思います。どの猫さんも大事な思い出になっています。

今日はなかでも印象的だった猫さんについてお話したいと思います。

わたしが取材するのは、飼い主さんといっしょにお店に勤務する看板猫さんたちです。

さすが接客に慣れているだけあって、初対面でも、挨拶すると目を合わせて挨拶を返してくれることがほとんどです。

そんなある日のこと、いつものようにカメラマンさんとふたりでお店を訪ねたのですが、猫さんの姿が見当たりません。聞けば、カウンターの奥に隠れて出ようとしないのだそうです。

マスターから聞いた前情報は「あまえんぼう」「優しい」「人が好き」「義理堅い」というものでした。マスターのHPには、猫さんの可愛いポーズの写真が並んでいます。

わたしたちは、猫さんが慣れて出てくるまで待たせてもらうことにしました。

ですが、待てども待てども姿を現してくれません。

かわりに時折「ナー……」という、か細い鳴き声が聞こえてきます。マスターに助けを求めているような、困ったような鳴き声です。

初対面の人間が苦手な猫さんは多いです。ですが、猫さんを信じてじっと待つと、時間が経つごとに目から警戒の色が消えていき、近くに寄って来て挨拶に答えてくれるようになります。しまいには撫でさせてくれることも。猫と人間の根競べです。

そうこうしているうちに次の約束の時間に。いったんは諦めて、また時間を置いて戻ってくることにしました。

夜、再び店を訪れたときのこと、店のドアの前にあの猫さんがいるではありませんか。

しゃがんだマスターに向かって、とびきりの甘えた表情で、無防備なポーズを繰り広げています。カメラマンさんはその可愛らしい様をすばやくキャッチ。無事ファインダーに収めることに成功したのでした。

看板猫とマスターの特別な関係

マスターから聞いた前情報の「あまえんぼう」「優しい」「人が好き」「義理堅い」。

これらはすべてマスターだけに向けられたものだと知りました。

マスターと猫とのあいだだけに存在する、甘い空気があるのです。

マスターを愛する猫さんのけなげさに、胸が熱くなった出来事でした。

現在は看板猫を引退し、マスターご夫妻と家で暮らしている猫さん。

たまにブログに登場する姿を見ては、可愛かった表情を思い出すのでした。

TEXT/逸見チエコ

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