こんにちは、よく猫の本を作っている樋口です。
WEBでみかけて気になっていた猫のまんがが書籍化されたということで、読ませていただきました。
「猫のとらじの長い一日」(今川はとこ:著 / 小学館)
かわいいフォルムのとらねこの表紙。帯には「猫エイズを発症した、余命3日の愛猫と。」とあります。猫を飼っている人ならすぐに自分の猫の顔を思い浮かべることでしょう。とらじくんはキジトラなので、拙宅のキジトラ猫のそばで、ゆっくりと本を開きます。
「私の大事な
猫の話をします」
ここからはじまる猫のお話。名前は「とらじ」。オスのキジトラです。子猫のときに作者である今川さんの友人に保護されるのですが、その際「猫エイズ」陽性との診断を受けます。といっても発症せずに7歳まですくすく元気に、むしろぽっちゃりめに育つとらじくん。発熱が続くようになったある日、病院で余命3日を宣告されてしまいます。そこから一時は奇跡の回復をとげるのですが……。
読みながら、数年前にお別れした黒白猫のひょう太くんのことを思い出していました。大きくて甘えん坊の男の子で、他の猫に献血をしたこともある子です。がんになり息を引き取る直前まで、私があごをなでると「気持ちいい」と言っていました(ように思えました)。ですが、最期の瞬間、私は怖くて抱きしめることができなかったのです。その後抱きしめて「かわいいね」「大好きだよ」とたくさん声をかけましたが、医療面でも他にできたことがあったはずだし、忙しくてあれもできなかった、これもできなかったと後悔することばかりでした。でも、ギリギリまで気持ちよさそうな姿を見せてくれたことで、(幸せだと思って過ごしてくれていたんじゃないかな)と思っています。勝手なのでしょうが。
その後、別の猫たち(黒猫+キジトラ)を迎えるようになりましたが、そんなに仲良くなるつもりはありませんでした。でも、猫はいつも人間をみています。だっこは嫌いでもなんとなくそばにいるのに気づいたり、お互いに少しずつ距離が縮まっていきます。こちらが「私の猫」と思っているように、猫の方でも「私の人間(下僕?)」と思ってくれているような気がします。
たとえ複数の猫を飼っていたとしても、猫はみんな一番かわいく、一番大事な子です。それぞれが特別で、比べることはできません。猫との暮らしには、100匹いれば100通りの物語や奇跡が生まれます。本の中にも猫の生命力の不思議さや、奇跡的なタイミングと思える出来事が描かれていますが、そういうことは猫のまわりで本当によく起こります。
そんな猫と人との、長くて短い大事な時間を感じさせてくれる本でした。
猫エイズは人間のエイズとは違うものです。無用な感染は防がなくてはいけませんが、必要以上に悲観したり、偏見を持つ必要はありません。(最近ではエイズキャリアの子を「りんご猫」と呼ぶ運動もあり、自走型保護猫カフェネコリパブリックの東京中野店はりんご猫専門の店舗です。)もちろん治療法が見つかることが望まれますが、猫エイズという言葉に対するイメージを変えるためにも、この本の中にいる、食いしん坊でかわいいとらじくんの幸せな日々を感じていただければ良いかなと思います。
<参考>
小学館作品紹介ページ https://www.shogakukan.co.jp/
今川はとこ Twitter:@imagawahatoko
↓こちらで3話まで読めます。(2018年4月現在)
猫はみんな大事!
(text / 樋口かおる)
スポンサードリンク